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全ナンバリングを網羅した「FINAL FANTASY 35th Anniversary Distant Worlds: music from FINAL FANTASY Coral」東京公演2日目をレポート

本オーケストラコンサートは「FINAL FANTASY(以下、FF)」シリーズの生誕35周年を記念し、この東京公演を皮切りにワールドツアーとして展開。世情を鑑みてか壇上での挨拶はなかったものの「FF」シリーズのブランドマネージャーである北瀬佳範氏、作曲家の水田直志氏(FF11)、崎元 仁氏(FF12)、祖堅正慶氏(FF14)、下村陽子氏(FF15)も会場を訪れ、演奏の合間にファンへ感謝を届けていた。

本記事では東京国際フォーラム ホールAで行われた東京・8月7日公演と、公演後に行なわれた「FF」シリーズ楽曲生みの親のである植松伸夫氏、指揮のアーニー・ロス氏へのインタビューを紹介する。

「FF1」~「FF6」まで2D時代のサウンドをオーケストラで体感!

本公演は第一部を「FF1」~「FF6」、第二部を「FF7」~「FF15」で構成し、すべてのナンバリングタイトルを網羅している。とくに第一部を中心にこれまでオーケストラで演奏されていなかった楽曲も多数あったので「これが聴けるとは思わなかった!」と驚いたファンも多かったことだろう。映像には2D時代の「FF1」~「FF6」を鮮やかに蘇らせた「ピクセルリマスター」シリーズも登場し、過去の思い出をより美しく、鮮明に映し出していた。

まずは「メドレー2002[FINAL FANTASY I~III]」と題し、数々のシリーズで親しまれている「プレリュード」をはじめ「FF1」の「メイン・テーマ」「マトーヤの洞窟」、「FF3」の「水の巫女エリア」や原典に触れていなくてもファンにはお馴染みの「チョコボのテーマ」、「FF2」の「反乱軍のテーマ」が壮大なオーケストラで届けられる。マトーヤから水晶の目を奪い取ったアストスや強大な黒騎士との戦い、水のクリスタルに光を取り戻すべく祈りを捧げたエリアの覚悟など、数々の記憶から「FF」シリーズの世界へと引き込まれていく。

続いてアーニー・ロス氏の挨拶やファンへの感謝と共に、ステージへ植松氏が招かれる。「FF」シリーズが発売された35年前の1987年を振り返りつつ、長きに渡り応援してくれるファンへ心からのお礼を伝えた。そしてコンサートツアー「Distant Worlds」が15周年を迎え、これまで全世界78都市で開催され今日の公演が212回目となること、譜面は142曲を超えたがまだまだ増えていくだろうと期待も覗かせる。

「FF3」の代表曲ともいえる「悠久の風」は多彩なアレンジも多く世に出ていて、意識せずとも耳にしているファンも多いことだろう。このオーケストラでは原曲らしい広大さ、跳ねるような軽快さをしっかりと響かせていた。「FF4」の「赤い翼~バロン王国」は赤い翼の隊長であり暗黒騎士だった頃のセシルの苦悩を感じさせる重々しさがあり、「ファイナルファンタジーIV メインテーマ」ではパラディンとして生まれ変わったセシルの決意や、己を犠牲にして仲間を救ったパロム&ポロムなどの思い出を金管楽器の伸びやかな音色が届けていく。

「FF5」の「はるかなる故郷~想い出のオルゴール」は、バッツの故郷であるリックスの村にフォーカスした曲だ。穏やかで柔らかな旋律とオルゴールらしさを表現した音色が、バッツと両親の記憶を静かに包み込む。切なさと雄大さをはらんだフィールド曲「新しき世界」は、絶望的な状況にあってもなお前に進もうとする力強さに満ちていた。

「FF6」の「迷いの森~魔列車~獣ケ原」では、仲間の元へ戻るため突き進むマッシュの旅路を再現。人を惑わせて誘い込むようなメロディの「迷いの森」、死者を乗せて走る物悲しい「魔列車」と陰鬱とした雰囲気の中でも、映像で流れたジークフリードとのバトルやメテオストライクにはつい笑ってしまう。ガウと初めて出会う「獣ケ原」は激しいパーカッションの重低音が心地よく、荒々しい生命力に満ちていた。さまざまな街で流れる「街角の子供達」はまさに子供たちの笑い声が聞こえてきそうな、ゆったりとしたリズムが特徴。今回「FF6」で演奏された楽曲は派手なイベントと紐づいたものではないかもしれないが、個人的には「この曲をオーケストラで聴ける日がくるなんて!」と非常に感慨深いものとなった。

第一部のラストは「FINAL FANTASY I~VI バトルメドレー2022」で、各タイトルの「戦闘シーン」や「バトル1」のもつ勢いや迫力だけでなく優雅さも感じるアレンジを「FF6」の「決戦」が最高潮まで引っ張り上げる。メドレーの締めくくりは、もちろん「勝利のファンファーレ」だ。

これを聴かずに帰れない!「FF7」~「FF15」の名曲が一堂に

第二部は「FF7」~「FF15」の中でも、屈指の人気曲や思い出深い曲が並ぶ。すでに「Distant Worlds」をはじめオーケストラで演奏された曲は多いものの、何度でも聴きたいと思う名曲ばかりだ。ここからはゲストボーカルやコーラスも加わり、より一層深みを増した演奏が続いていく。

トップバッターは「FF8」のオープニング曲である「Liberi Fatali」。第二部の開幕を告げるように、激しい焦燥感に駆られるようなメロディと共に混声合唱がたたみ掛ける。「FF11」の「Ragnarok」は「アトルガンの秘宝」の冒険の最後を飾る一曲だ。もともと原曲にあった重厚感をループでさらに荘厳なものとし、イベントシーンの映像と併せて心を強く揺さぶってくる。

「FF7」の「エアリスのテーマ」は、エアリスとの出会いやゴールドソーサーでのデートイベント、そして悲しい別れまで映像とともに追体験。仮に映像がなくともプレイしていれば、この曲を聞いただけでエアリスとの思い出が溢れ出していただろう。「FF12」の「剣の一閃」はバトル曲らしく、叩きつけるような低音とアップテンポなリズムがプレイヤーのテンションを大いに高めてくれる。国同士の苛烈な戦いを描いた映像と併せて、思わず拳に力が入ってしまった。

ここで、RIKKIさんが昨年20周年を迎えた「FF10」から「素敵だね」を歌唱。ティーダとユウナの揺れ動く感情と共に、その当時と変わらない透き通るような歌声を披露してくれた。「FF15」の「APOCALYPSIS NOCTIS」は、ノクティスの厳しい運命を見届ける本編のほか映画「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV」のエンディングでも聴くことができる。原曲からオーケストラ演奏と近い曲だが、よりコーラスを引き立たせるようなアレンジに感じられた。「FF13」のバトル曲「閃光」は、果敢に戦うライトニングのイメージそのものといったところ。やや抑え気味の前半から後半にかけての爆発力が印象的で、その盛り上がりに合わせて盛大な拍手も送られていた。

「FF9」からは「いつか帰るところ~Melodies Of Life」。ゲームのタイトル画面に流れる「いつか帰るところ」は原曲のシンプルさをそのまま表現し、白鳥英美子さんがエンディングテーマ「Melodies Of Life」を歌い上げる。「FF9」の抱えるテーマに深く踏み込んだ歌詞も素晴らしく、ひとつずつ胸に刻んでいくたび涙がこぼれそうになったのはきっと会場に集ったファンに共通する想いだっただろう。

「FF14」の「天より降りし力」は原曲のもつ戦いを前にした張り詰めた空気をコーラスがさらに盛り上げ、ひりつくような緊張感がより強まったイメージだ。映像でもイフリートやタイタン、シヴァなど「FF」シリーズでもお馴染みの存在が冒険者を相手に強大な力を振るっていて、とくに「FF14」のプレイ経験があれば思わずギミック処理について考えたり、手が勝手に動いたりしてしまったのではないだろうか。

第二幕の最後を飾ったのは「FINAL FANTASY Main Theme with Choir -The Definitive Orchestral Arrangement-」と題された、まさに言葉通りメインテーマの決定版だ。直近では「ピクセルリマスター」だけでなく「STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN」の冒頭で目にしたファンも多いかもしれないが、シルエットで描かれた4人の光の戦士が新たな一歩を踏み出す場面と共にスタッフロールが流れるという粋な計らいも。オーケストラの音色とコーラスが幾重にも重なり、これからも続いていく「FF」シリーズの力強い一歩として感じられた。

盛大な拍手の中で始まったアンコール1曲目は「FF10」から「ザナルカンドにて」。悲壮感を伴いながらも、静かな決意に満ちた名曲は何度聞いても魂を揺さぶられる。そして「FF7」の「片翼の天使」はフルCG映像作品「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN」の映像を中心に、真っ赤なライトに染まったステージ上の演奏で締めくくられる。振り返れば「この曲が!」という驚きと「やっぱりこの曲だよね」という安心感に満ちた、「FF」シリーズファンにとって最高のひと時を味わえるコンサートだった。

植松氏とアーニー氏にインタビュー

――本日の公演を終えての感想をお願いします。久しぶりの開催となりましたが、いかがですか?

アーニー氏:25周年、30周年、そして35周年という機会に参加させていただいたことを光栄に思います。ノブさん(植松氏)がこのような曲を作ってくださって(コンサートを)一緒にできること、とくに日本で開催でき、東京と兵庫で演奏できるのもとても嬉しく思っています。そしてスクウェア・エニックスの方々にも感謝を申し上げます。

植松氏:35年もよく続いたなというのが正直なところです。ステージでも言いましたけど、支えてくれる皆さんがいてこその結果だと思いますし、素直に嬉しいです。35年経ってもこうしたコンサートが開けるのは自分にとっても光栄ですし、今日のコンサートをこれだけたくさんの方が見てくれて、喜んでくれたとしたら作曲家冥利に尽きるというか。次は40周年ですかね!

ただ曲数が多くなりすぎていて、1回のコンサートだとお客様によっては「あれもこれも聴きたかったのに」と出てしまうかなとも思っていて。だから3日くらい連続でやったら皆さんが聴きたいと思う色々なアレもコレもたっぷり演奏できるのかなと(笑)。そんな贅沢なことを思っていました。

――今回のタイトルの「Coral」はどのような意味が込められているのでしょうか?

植松氏:ダジャレですよ。35周年だから珊瑚(さんご)=Coralっていう。でも珊瑚のままだと日本人にしか通じないダジャレになってしまうので、僕は合唱のほうの「Choral」の綴りにしたほうが音楽に関係していいのではないかと思っていたのですが、アーニーさんに「それだと合唱のコンサートだと思われるからダメ!」って言われてしまって(笑)、やむなくダジャレです。

珊瑚=Coralで35周年なんて、誰でも気づくじゃないですか。100人いたら100人気づく。だからイージーすぎると思って合唱のほうを提案したのですが、イージーすぎるのが勝っちゃった。これは屈辱ですよ(笑)。

――いえいえ、35周年のタイトルがまさかダジャレとは思いませんでした(笑)

植松氏:お客様に失礼じゃないですか! ダジャレかよって(笑)。

アーニー氏:世界中で毎回聞かれるんですよ(笑)。

植松氏:外国の方に説明するのは難しいですよね! あとはアーニーさんに任せます。

――セットリストの基準はどのようなものだったのでしょうか?

植松氏:「FF1」~「FF6」はスクウェア・エニックスさんと僕が一緒に決めました。これまであまり譜面にされていない、新しいものをやりましょうということで、こんなのどうですかと出してもらったものの中から僕が選んだという感じです。

「FF4」の「赤い翼」とか、好きだといってくれる人の多さのわりにこれまでオケの譜面にしてこなかったので、やれてよかったですね。

――アンコールは名曲と知られる2曲が演奏されましたが、これはどのように選ばれたのでしょうか?

植松氏:あの2曲はやらないわけにはいない、というところがありますよね。あとはセットリストのどこに置くかという。以前の「Distant Worlds」で「片翼の天使」を1曲目に持ってきたこともありますし、それはそれで面白かったんですけど。まあ、でもやはり最後じゃないですかね。「セ・フィ・ロ・ス♪」で終わる。海外のコンサートツアーでは、アンコールでこの曲を演奏する時は僕も合唱に混ざって歌ったりもしているんですよ。

ただ今日は、あまり声を出すのも憚られる状況なので……熱量が最高のところで「セ・フィ・ロ・ス♪」となって、お客様に満足して帰っていただけると思うんです。だから最後がいいんじゃないですかね。

アーニー氏:「片翼の天使」を最後のアンコールに入れるというのは、伝統になりつつあります。グローバルでは、それを求めているというリアクションをとても強く感じます。シカゴでもロンドンでも、どこでも「最後の1曲はぜひこれで!」という熱量をお客様から感じます。

――今回の「片翼の天使」はステージが赤いライトで染まっていたのが印象的でした。

アーニー氏:私も、ああいう演出がとてもフィットするのではないかなと思います。2週間前にヒューストンでコンサートを行ったんですが、やはり最後は「片翼の天使」で、文化の違いもあると思いますが、その時はお客様の方からすごい反応がありました。これは最後にもってくるのに最適な曲です。

植松氏:国によってはお客様が一緒に歌いますからね。スクリーンに歌詞を流して、お客様と合唱になるんです。

アーニー氏:昔はお客様に教える時間があって、この歌詞はこうですよと説明して、皆さん一緒に歌いましょうとやるとすごく盛り上がりました。そういうリアクションはすごく楽しいです。

植松氏:クラシックだとそれでいいのかもしれませんけど、ゲーム音楽のコンサートは別に大人しくしてる必要はないと思うんですよね。僕はオーケストラだからちゃんとしなきゃいけないっていうのは面白くなくて、ゲーム音楽だから何をやってもいいと思ってますんで。しばらくは難しいですが、もっと大騒ぎできる面白いアイデアがあれば突っ込んでいきたいと思います。

アーニー氏:やはり壇上で演奏している私たちにとっても、反応があるとそのエネルギーをいただけるんです。それがオーケストラの方にもいい影響になっていると思います。

――今後、兵庫や海外にも展開していきますが、これから公演を待っているファンへのアピールポイントをお聞かせください。

植松氏:新しい譜面が多いので、そこを期待してほしいですね。全体の三分の一くらいは、皆が好きだと言ってくださっていたけどオケの譜面になっていない曲をたくさん演奏していますので楽しみにしていてほしいです。

アーニー氏:45~50%は新しい譜面だったと思いますよ!

植松氏:あれっ、そんなにありましたっけ(笑)。

――最後に、公演に来られた方とワールドツアーを楽しみに待つ方へ一言お願いします。

植松氏:同じことばかりでは飽きてしまうので、「Distant Worlds」も色々と変えていきたいですね。新しい趣向をこらして、お客様にとっても我々にとっても新鮮な気分でいつまでも続けられるようなコンサートに育っていけばいいと思います。

アーニー氏:曲もすごく多くなっていますが、前に演奏した曲も活用しつつ、パリやロンドンなどで前にどんな演奏をしたかな、なんの曲があったかな、じゃあ演奏していないこの曲を入れようとか、年ごとにプログラムを変えて新しい曲を必ずいれています。その中にも「片翼の天使」のような、いつもあるクラシックな曲も入れ込みつつ、やはり新しい流れを取り入れながら開催していくのが望みですね。

とくに今回のコンサートでは後半とくにアップテンポな曲が多くて、兵庫公演でも楽しんでいただきたいです。前半は「FF1」から「FF6」までを演奏しますが、その中で「FF」の曲の進化がすごく分かる構成になっています。そこもぜひ、楽しんでいただければと思います。

――ありがとうございました。

セットリスト

【第一部】
01. メドレー2002[FINAL FANTASY I~III]
02. 悠久の風(FINAL FANTASY III)
03. 赤い翼~バロン王国(FINAL FANTASY IV)
04. ファイナルファンタジーIV メインテーマ(FINAL FANTASY IV)
05. はるかなる故郷~想い出のオルゴール(FINAL FANTASY V)
06. 新しき世界(FINAL FANTASY V)
07. 迷いの森~魔列車~獣ケ原(FINAL FANTASY VI)
08. 街角の子供達(FINAL FANTASY VI)
09. FINAL FANTASY I~VI バトルメドレー2022

【第二部】
10. Liberi Fatali(FINAL FANTASY VIII)
11. Ragnarok(FINAL FANTASY XI)
12. エアリスのテーマ(FINAL FANTASY VII)
13. 剣の一閃(FINAL FANTASY XII)
14. 素敵だね(FINAL FANTASY X)
15. APOCALYPSIS NOCTIS(FINAL FANTASY XV)
16. 閃光(FINAL FANTASY XIII)
17. いつか帰るところ~Melodies Of Life(FINAL FANTASY IX)
18. 天より降りし力(FINAL FANTASY XIV)
19. FINAL FANTASY Main Theme with Choir -The Definitive Orchestral Arrangement-

【アンコール】
20. ザナルカンドにて
21. 片翼の天使

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