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インディーゲームの世界では、愛らしい“動物の主人公”が2022年の話題を席巻した | WIRED.jp

さて、ここで問題。迷子のネコ、悪魔のような子ヒツジ、かわいいキツネの共通点とは?

答えは、注目のゲームを選出する「 The Game Awards 2022」にノミネートされたインディーゲームの主人公になった哺乳類だ。最優秀インディー賞にノミネートされた5作品のうち、「Stray」「Cult of the Lamb」「Tunic」の3作品は、動物になって遊ぶゲームだ。残りの2作品の主人公は、「Sifu」が武道家、「Neon White」は天界の暗殺者である。

3つのうちどのゲームが受賞してもおかしくないが、愛猫家とネコたちの支持を受けて大ブレイクした「Stray」が有力視されている。本作の動物描写は不完全ながらも、3作のうち最もリアル志向のものだ。

Strayの主人公はトラネコで、SF的な冒険を楽しみながら居間の壁をひっかいたり、棚から物を取ったりするチャンスを存分に与えられる。お茶の間では、たくさんのネコがこの遊びに加わりたがった。

その対極にあるのが「Cult of the Lamb」だ。本作の主人公は、意図的に擬人化された邪悪な子ヒツジである。ヒツジというよりも、むしろ羊飼いに近い。

ヒツジになったあなたは司教と戦いながら、ヒューマノイドのカルト集団を維持する。ヒューマノイドたちはあなたを崇拝し、あなたと結婚し、あなたの庭の手入れをし、ときにはあなたのシチューの材料になる。

先鋭的な内容とかわいい絵柄が相乗効果となり、プレイヤーに独特な印象を残す作品だ。しかし、発売当初に技術的な問題が多く、支持を広げられなかった。

「Tunic」の開発陣は、主人公のキツネを本物のように描くというよりは、「Cult of the Lamb」と同様に愛らしいマスコットとして起用している。ふわふわのキツネが着ている緑色の服は、隠されたダンジョンを切り抜け、獣のようなボスに立ち向かう「ゼルダの伝説」シリーズのリンクを彷彿とさせる。「Tunic」は「Stray」ほど時代の精神に影響を与えるものにはならなかったが、インディーゲームの傑作であり、個人的には今年のお気に入り作品のひとつだ。

ゲームの主人公に動物が人気の理由

それにしても、この動物人気は何なのだろうか。ゲームに動物が登場することは、特に新しい現象ではない。それでも最近の動物人気は、ゲーム文化における別の動向とマッチする。

つまり、人間視点の体験から離れ、より抽象的な現実逃避の世界へと移りつつあるという動向だ。例えば人気のVTuberには、動物と人間の中間のアバターや、完全に動物のアバターを使っている場合が見受けられる。

それでは結局、文化の争いを制したのは毛皮を身にまとったファーリー(日本で言うケモナー)たちなのだろうか。その答えは、イエスでもありノーでもある。

幼稚園の教室を探したところで、ネコ用トイレは置かれていない[編註:動物を自認する生徒のために学校がペット用トイレの準備を余儀なくされているという“陰謀論”が、米国の保守派の間で拡散している]。これはトランスフォビア(トランスジェンダーの人々に対する不寛容な態度や嫌悪)に根ざした迷信が理由であり、保守界隈の人々が22年にこうした考えに飛びついたのだ(ちなみに児童書『ウォーリアーズ』シリーズの熱狂的なファンほど動物のふりをすることに執着している集団はない)。 

だが、現代のゲームデザインに美しい毛皮が影響を与えているさまを目の当たりにすることはあるだろう。例えば「ザ・シムズ4」でオオカミ男になれる拡張パック「Werewolves Game Pack」がそうだ。ファーリーとゲーマーとの長年にわたる交流の結果、このような調和に至ったのである。

「自己」というものを失った感覚

それでは人間に影響を受けた主人公は古くさい存在になったかというと、決してそうではない。この夜の最大の賞であるゲーム・オブ・ザ・イヤーは、「ELDEN RING(エルデンリング)」 や 「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」が獲得しそうな勢いだ。こちらには「Stray」もノミネートされたとはいえ、冒険好きなネコが歴史的ベストセラーを打ち負かすとなれば驚きだ。

ビデオゲームの楽しさは、自分の肉体とは似ても似つかないデジタルの肉体に憑依して動かせることにある。雲の上を2段ジャンプすることもできるし、鉄の拳で敵を投げ飛ばすこともできる。そして何度でも死から蘇ることができるのだ。「Stray」のネコや「Tunic」のキツネになりきってゲームで遊ぶと、「自己」というものを失った感覚が一層強くなる。

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