
日々注目度が高まっている「メタバース」。メタバースによって私たちの生活はどのように変わるのか? メタバースが切り拓く新しい働き方、暮らし方とは?
この新連載「メタバースとリアル 消えゆく境界線」では、そんな疑問に対して、一般社団法人Metaverse Japan全面協力のもと、メタバースやWeb3の専門家との対談を通して答えを探していきます。
第1回では、ライフハッカー[日本版]副編集長の田中がMetaverse Japan代表理事の長田新子さんと馬渕邦美さんに「そもそもメタバースとは何か?」「メタバースによって私たちの生活はどう変わるのか」といった根本についてお聞きしました。今回は後編です。
▼前編はこちら
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【新連載】「メタバース」って、結局何? 暮らしと働き方が変貌する未来 | ライフハッカー[日本版]
メタバース時代に日本が世界をリードする可能性
ライフハッカー編集部・田中(以下、――) 前編では日本のIP(知的財産)が持つ可能性についてのお話がありましたが、日本がアニメやマンガ、ゲームといったIPタイトルで世界で勝負していくためには何が必要になるでしょうか?
馬渕: 今、世界の起業家の多くは、最初からグローバルを見据えてサービスを展開しています。日本も人口が減っていくなか、これまでのように日本国内だけで勝負するのは厳しくなってきています。
そのときに、言葉の壁などでどうしても不利になる場面はあるかもしれません。
とはいえ、日本のIPは非常に強いので、その武器を生かして再び世界で輝くことはできるはずです。そのために今は本当に重要なタイミングだと感じています。
世界はまさに時代が大きく変わるゲームチェンジを迎えようとしています。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)と呼ばれる現代を代表するメガプラットフォーマーも、スマホが現れたタイミングでその波に乗り、大きく成長しました。
そして今は、スマホの次のゲームチェンジが起きようとしているのです。このチャンスに乗らないと、次の大きな変化が起きる10年後、20年後まで日本は負け続けることになってしまうかもしれない。
でも、20年後に今と同じように日本のIPが支持されているかどうかはわかりません。そう考えると、今は大きなチャンスですし、ここで頑張らないと今度こそ世界に追いつけなくなってしまう。そんな危機感を覚えています。
今後、メタバースのルールメイキングが進んでいく

――さまざまな可能性についてお聞きしてきましたが、逆にメタバースが広がることによって起こりうる問題やリスクなどはありますか?
長田: 今、SNSの世界で個人に対する攻撃などが問題になっていますが、同じことがメタバース内で起きる可能性はあります。
リアルではないことにメリットがある一方で、直接会うわけではないから、都合の悪いことがあればすぐに姿を消せるという側面もあります。アバターの姿であっても、そこにいるのはその人自身だということを意識していないと、トラブルにつながるかもしれません。
また、そういった人と人との争いが起きたときに、法的な問題をどうするかといったことも課題です。メタバースはグローバルかつシームレスにつながっているので、仮に犯罪行為があったとしても、それをどこの国の法律で裁くのかが問題になるでしょう。
馬渕: 法整備の面では、考えないといけないことが本当にたくさんあります。たとえば金銭のやりとりが発生した場合には、税金をどこの国のルールで適用するのかという問題になりますが、まだ何も決まっていません。
今、世界で同時に同じ問題が起きているので、これからルールメイキングをなされていくと考えています。
メタバースとWeb3の関係性
――先ほどから何度かWeb3という単語が出ていますが、Web3とメタバースはどのような関係にあるのでしょうか?
馬渕: Web3はブロックチェーンテクノロジーを基本としたもので、今後メタバースの中で使われていく可能性が高い技術だといわれています。
ブロックチェーンにはデータの所有権のようなものが刻まれているので、「メタバース内でこの人がこのアイテムを持っている」といったことを証明できるようになります。
たとえば、AというメタバースとBというメタバースがあったとして、現状のWeb2ベースのメタバースでは、それぞれ別のアバターを作って利用している状態です。
これがWeb3になることで、Aのメタバースでアバターを購入したという記録が、Bのメタバースにも引き継がれるようになります。すると、Aで購入したアバターの姿で、Bにも遊びに行けるように拡張していく可能性があります。
メタバースの世界がたくさんあり、それらがブロックチェーンでつながっているというイメージですね。これはあくまでのブロックチェーン技術が持つ可能性の一部に過ぎませんが、非常に重要なポイントになってくると考えられます。
ただし、今後Web3とメタバースが完全に重なっていくのかはまだわかりません。親和性は高いですし、テクノロジーの観点でブロックチェーンは非常に有用な技術だと考えられています。
長田: リアルな世界では渋谷区と隣の新宿区はつながっているし、当然、同じ服を着て移動できますよね。自分が買ったものを持って横に移動できることは、リアルでは当たり前のことです。メタバースにおけるWeb3は、それを実現するための技術というイメージですね。
メタバースで勝負するにはスピード感が何より大切

――これから日本がメタバース時代に向かうなかで必要なことは何でしょうか?
馬渕: 世の中がメタバース時代に向かっていく変化は、これまでの4倍速、5倍速で進んでいると感じています。「じっくり考えてから動こう」などと考えていたら、あっという間に置いていかれてしまいます。
企業の方にもよくお伝えしているのですが、勉強するためにMetaverse Japanに入るのではなく、まずはどんどん動いてみて、その結果を持ち寄ってディスカッションしていく形で進めていく必要があると思います。
そのためのリソースを確保する、つながりをつくる場として私たちの団体を活用いただくのがよいのではと考えています。
長田: メタバースに限らず、日本の大企業や行政は意志決定に時間がかかる傾向が強いです。私はこれまで、海外の企業と仕事をすることが多かったのですが、伸びていく海外企業やそれを後押しする行政は本当にスピード感があります。
今後、日本がメタバース時代にシフトしていくなかで、そういった社会の仕組み自体についても変化していけば、日本がより世界で戦えるようになっていくのではないかと感じています。
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【新連載】「メタバース」って、結局何? 暮らしと働き方が変貌する未来 | ライフハッカー[日本版]
2022年7月14日(木)、渋谷ストリーム ホールにて、メタバースの社会実装に向けた課題や未来を議論するカンファレンス「Metaverse Japan Summit 2022」が開催されます。詳細はこちら
長田新子(おさだ・しんこ)
一般社団法人Metaverse Japan 代表理事、一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長
AT&T、ノキアにて通信・企業システムの営業、マーケティング及び広報責任者を経て、2007年にレッドブル・ジャパン入社。コミュニケーション統括責任者及びマーケティング本部長(CMO)として10年半、エナジードリンクのカテゴリー確立及びブランド・製品を市場に浸透させるべく従事し2017年に退社。2018年より渋谷未来デザイン 理事・事務局長。NEW KIDS(株)代表としてマーケティング・PR関連のアドバイザーやマーケターキャリア協会理事としてキャリア支援活動も行なう。
馬渕邦美(まぶち・くによし)
一般社団法人Metaverse Japan 代表理事、PwC コンサルティング合同会社 パートナー
米国のエージェンシー勤務を経て、デジタルエージェンシーのスタートアップを起業、代表取締役社長に就任。事業を拡大しバイアウトした後、米国のメガ・エージェンシーグループの日本代表に転身、4社のCEOを歴任し、デジタルマーケティング業界で20年に及ぶトップマネジメントを経験。2018年にフェイスブック ジャパン執行役員ディレクター就任。現在、PwCコンサルティング合同会社のディレクターとして日本企業のデジタルトランスフォーメーションを実現させている。
Source: Metaverse Japan/Photo: 大崎えりや
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