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メタバースで「日本のゲーム・アニメ業界」が覇権を取る方法 | 日本のメーカーに大きな商機が訪れる | クーリエ・ジャポン

日本のコンテンツがメタバースで大活躍する可能性がある Photo: timandtim / Getty Images

日本のコンテンツがメタバースで大活躍する可能性がある Photo: timandtim / Getty Images

Text by Yushi Okajima

メタバースと聞くと、メタ社をはじめとした海外のプラットフォーマーが勢力を拡大する潮流に見える。しかし、日本のアニメやゲームなどのコンテンツこそ、メタバースに必要だろう。『メタバースとは何か ネット上の「もう一つの世界」』の著者・岡嶋裕史氏が、その可能性を解説する。

メタバースは、「現実とは少し異なる理で作られ、自分にとって都合がいい快適な世界」だと考えている。私たちはこれまでにもこうした世界を楽しんできた。小説、演劇、ゲーム、SNSなどがそうだ。

ただ、これらはひとときその世界を消費して楽しみ、そののち現実へ帰るものであった。だから現実が優位であったし、小説やゲームの市場はそれなりに大きいがマクロで見ればさほど儲かるものでもない。

これらの延長線上にあるメタバースが、なぜ注目を集めているかと言えば儲かりそうだからである。ゲームもSNSも大衆の需要を満たしたが、彼らの時間と資金の一部しか切り取ることができなかった。







でも、メタバースはゲームやSNSのように、「自分のために最適化された、都合のよい世界」のなかで仕事も勉強も、その他もろもろの活動もしてしまおうという世界である。利用者からもっと時間とお金を奪える可能性がある。お金を使ってくれれば、それはそのままメタバース提供企業の懐に入るし、時間を消費してくれれば広告接触時間が増える。

その「世界」の中で生活が営まれ、経済圏が生まれるとしたら、メタバースを提供する企業は自在な制度設計ができる。アップストアやプレイストアを思い出して欲しい。彼らが設定する“みかじめ料”は合理的な計算で算出されたものではない。あれが受け入れられているのはひとえに彼らが先駆者で、あのしくみを作ったからだ。法や規範で雁字搦めになった現実とは異なる理で駆動するフロンティアなのである。だから、テックジャイアントですら目の色を変える。

今は明らかにハイプ(期待値が実状を大きく上回る状態)なので、遠くないタイミングで幻滅期が訪れるだろうが、それを超えて着実に市場が拡大するのは間違いないだろう。

メタバースに熱心な4つの勢力

メタバースに取り組もうとしている勢力は概ね4つに分類することができる。ゲームとSNSとxRとクリプトである。ゲームとSNSがメタバースに熱心なのは、メタバースに対して技術的に親和性が高く、素早く上手にやれそうだからだ。

ゲームもSNSも、現実とは違う快適な空間を目指して進歩してきた。彼らが忸怩(じくじ)たる思いで見送ってきたのは、仕事や学校のためにサービスを離れる利用者の背中である。ゲームやSNSを拡張して、「お金を稼ぐことも、勉強も、友だちとのおしゃべりもこの同じ空間でできるんですよ」と誘うことができれば、彼らは自分たちのサービスをもっと長時間利用してもらい、もっと儲けることができる。



xRはVRやARの総称だ。私はVRが現時点でメタバースに必須だとは考えていないが、「世界」をサービスとして提供するならその世界への没入度合いは高ければ高いほどいい。平面のディスプレイより、360度の立体視ができるVRは、ずっとその世界の燦めきや音像を感じさせてくれるだろう。

ただ、今のところVRのヘッドセットは重く不格好で、その装着体験は快適なものではない。あれをして「快適である」と言い切る人は重度のゲーマーで、世論の大勢ではない。VR勢が一山当てるには、装着したまま外出できるほどの軽快さとデザイン性を達成する必要がある。

クリプトは暗号資産勢である。なぜブロックチェーン、NFT、暗号資産といった勢力がメタバースを目指すのか説明するには、Web3という別の金脈の話から始めねばならず、今回の特集の趣旨とは違ってくるので、別の機会に譲りたい。

ブロックチェーンは暗号資産以外の用途でも有用であると言われ続けているが、なかなか「では、何に活用するのか?」の答えを見つけられずにいる。彼らがようやく見つけた手がかりがNFTやメタバースであると理解しておけば、ここでは充分である。

デジタルツインとメタバース

ところで、いまメタバースと呼ばれているものには2つの主潮がある。現実に寄せた疑似現実と、現実と違っていていい(違っているからこそいい)仮想現実である。狭義には後者をメタバースといい、前者を区別するときにはデジタルツインなどと表現する。




どちらにも利用価値がある。デジタルツインは気象予測や自動運転車の機械学習、遠隔医療などで強大な需要がある。あくまでも現実に寄り添い、現実と同じ空間をデジタルデータで作り上げるのだ。

いっぽうでメタバースは現実と遊離した「仮想の」世界を構築できることに最大の特徴がある。冒頭からメタバースを「現実とは少し異なる理で作られ、自分にとって都合がいい快適な世界」と表現してきた。これを、現実からの逃避場所と規定してしまうといかにも後ろ向きだが、たとえば病気や障害、加齢などによって歩くことができなくなったけれども、メタバースならそれが叶うとか、トランスジェンダーで苦しんでいたがメタバースなら思うままの自分になれるといったように、人生の選択肢を拡げる方向へ作用するなら、メタバースを創っていく価値があると思う。

日本のメーカーに商機がある

デジタルツインにしろメタバースにしろ、デジタルデータで一つの世界を作り上げるのは大仕事である。近年のゲームは開発に100億円単位の予算を計上することが珍しくないが、精度の高いメタバースを目論むならそれを1桁上回る投資が最低ラインになるだろう。

したがって、メタバースの基盤部分(プラットフォーム)に手を出せるプレイヤーは限られてくる。ただ、そのなかで、現実志向ではない仮想現実を作ることに長年血道を上げ、膨大なアセットを積み上げてきたのが日本のゲーム、アニメ業界である。他国に熱狂的なファンも多い。このアセットを上手に活用することができるならば、日本のメーカーに大きな商機が訪れるだろう。

一つ心配なのは利用者数である。SNSでも、ゲームでも、「世界」を構築するサービスにとって最重要項目はアクティブな利用者数だ。たとえばマイクロソフトがアクティビジョン・ブリザードを8兆円弱で買収して話題になったが、あれは技術というよりもユーザを買った側面が強い。



日本のメタバース企業としてソニーに期待する向きも多い。技術もアセットも強固な企業だが、彼らが持っている利用者数はSNS大手などと比較すると1桁違う。ソニーがもしメタバースで覇権を望むならば、どのような手段を用いてでも利用者数を上積みする必要がある。

これらの企業群が切磋琢磨することで、幻滅期を経た後のメタバースは力強く発展するだろう。その一端をこの特集でお楽しみいただきたい。

PROFILE

岡嶋裕史 1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所に勤務した後、関東学院大学経済学部准教授・情報科学センター所長を経て、現在、中央大学国際情報学部教授。


























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