
3回目を迎えた今回の「Femtech Fes! 2022」。2021年を超える来場者が訪れ、フェムテックに対する注目度の高まりを感じさせた。
提供:fermata
生理、妊娠、更年期など、生物学的女性のライフステージにおける健康課題をテクノロジーで解決する「FemTech(フェムテック)※」に注目が高まっている。
10月14〜16日の3日間、「あなたのタブーをワクワクに変える“フェムテック交差点”」をテーマに都内で開かれた「Femtech Fes! 2022」(主催・fermata)には、日本を含め世界33カ国・6地域から200ものプロダクトやサービスが集結した。
2027年までに1.1兆ドル(約165兆円)の規模になるとも予測されるフェムテック市場。その勢いを反映し、3回目を迎えた今回のFemTech Fes!は「世界最大級のフェムテックイベント」と話題になった前回の2021年を超える規模となり、会場は熱気に包まれた。
バラエティに富んだプロダクトやサービスの中から、国内外の注目アイテムを紹介する。
※フェムテックとは:アプリやAI(人工知能)などのテクノロジーを使って生物学的女性の健康課題を解決する製品やサービスを指す。Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語。アプリ・AIなどを使わない製品についてはFemcare(フェムケア)とも呼ばれる。
女性だけでなく、男性や家族連れ・カップルの姿も見受けられた。
提供:fermata

フェムケア製品の代表格「吸水ショーツ」
吸水ショーツは、ナプキンやタンポンの代わりにしたり併用したりできる生理用ショーツ。日本で最も浸透しているフェムケア製品だけあって、アツギやオンワード樫山といった大手からスタートアップまで日本企業も多数出展。来場者の注目を集めた。
Reboltの吸収型ボクサーパンツ。
撮影:湯田陽子
現役サッカー選手の下山田志帆さんと元サッカー選手の内山穂南さんが立ち上げたReboltは、同社のライフスタイルブランド「OPT」を代表するプロダクト、吸収型ボクサーパンツを出展した。554人のアスリートの声をもとに開発。アスリートレベルの動きをしても経血の漏れを気にせず履ける機能性と、スタイリッシュなデザインが特徴だ。

アプリケーター付き「月経カップ」も
日本でも広がり始めた月経カップ。タンポンと同じく膣内に挿入するタイプの生理用品で、カップにたまった経血を捨て、洗浄して繰り返し使える。経済性やサステナブルという観点だけでなく、タンポンより多くの経血をためることができるため、交換頻度を減らせるというメリットもある。
CLARICUP(クラリカップ)。
撮影:湯田陽子
フランス・ラボラトリークラリファーム社のCLARICUP(クラリカップ)。豊富なサイズ展開で、持ち運びに便利な消毒用ボックスも付いている。
enna cycle(エナサイクル)。
撮影:湯田陽子
スペイン・エナ社のenna cycle(エナサイクル)は、アプリケーターが付いているのが特徴。アプリケーター付きタンポンのように装着できるため、月経カップ“初心者”でも挑戦しやすいかもしれない。
鎮痛剤に頼らない「生理痛緩和」デバイス
生理痛を何とかしたいけれど、鎮痛剤に頼り切りでいいのか……。そんな悩みを抱える人に注目のフェムテックが、電気パルスで痛みを緩和するデバイスだ。
Myoovi(マイオーヴィ、左)とLivia(リビア、右)。
撮影:湯田陽子
イスラエルのLivia(リビア)は、電気パルスで中枢神経を刺激して生理痛を緩和するデバイス。薄い電極パッドを腹部に貼り、手のひらサイズのデバイスでオンオフや強度を調節できる。イギリスのMyoovi(マイオーヴィ)も、電気パルスで神経を刺激し生理痛を緩和するデバイス。腹部のパッドに取り付けたデバイスで直接操作する。
生理用ナプキン無料提供サービス
大学や商業施設のトイレに生理用品を無償で設置する動きが広がる中、そうしたニーズを支える新たなサービスも登場している。スマホアプリを使い、個室トイレ内に設置されたディスペンサーからナプキンを無料で受け取れるというものだ。
OiTr(オイテル、左)とtoreluna(トレルナ、右)。
撮影:湯田陽子
日本のオイテル社が展開する「OiTr(オイテル)」は、生理用ナプキンを収納したディスペンサーにサイネージ広告を表示、その広告費をもとにナプキンを無料で提供するビジネスモデルを展開。同社公式サイトによると、商業施設や大学など全国172施設に2253台設置されているという(2022年10月21日現在)。
婦人科特化型オンライン診療サービスsmaluna(スマルナ)を展開するネクイノ社も、同様のサービス・toreluna(トレルナ)プロジェクトをスタート。現在、ベータ版の実証実験を全国の商業施設や駅などで実施中だ。

更年期の悩み「ホットフラッシュ緩和」デバイス
上半身がのぼせたり、体がほてったりと、更年期の代表的な症状と言われるホットフラッシュ。多くの女性が苦しむこの症状を緩和するさまざまなデバイスが展示された。
Embr Wave(エンバー・ウェーブ)。
撮影:湯田陽子
アメリカ・エンバーラボ社のEmbr Wave(エンバー・ウェーブ)は、手首に付けて温度調節を行うウェアラブルデバイス。ほてりを感じた時に本体のボタンを押すとすぐに冷却を開始。温度レベルを5〜60分単位でコントロールできるほか、スマホアプリで使用状況をモニターし、ホットフラッシュのパターンを確認することもできるという。
Menopod(メノポッド)。
撮影:湯田陽子
カナダのMenopod(メノポッド)は、ほてりを感じた時に首筋に当てるデバイス。ホットフラッシュに悩まされながらもホルモン治療を受けられなかったという創業者が、自宅で簡単にほてりを緩和できるデバイスを目指して開発。スイッチを入れるとたった数秒で5℃まで冷たくなるという。
尿漏れ予防に「骨盤底筋トレーニング」デバイス
妊娠中や産後だけでなく、40歳以上の女性の約4割が経験しているという尿漏れ。
骨盤の底にある骨盤底筋が衰えることで起こるとされ、筋力低下を予防・改善するヨガやエクササイズが広く知られている。そうしたトレーニングを、スマホアプリと連携させることでより効果的にゲーム感覚で行えるデバイスは、世界のフェムテック市場で注目されるテクノロジーの1つだ。
Elvie Trainer(エルビートレイナー)。
撮影:湯田陽子
フェムテック・ブームの火付け役になったと言われるイギリスのElvie Trainer(エルビートレイナー)。1日5分、週3回のトレーニングを4週間で効果を実感できるという。日本でも、FemTech Fes! 2022主催者のfermata(フェルマータ)のオンラインショップなどで購入可能だ。
Perifit(ペリフィット、左)とKegelbell(ケーゲルベル、右)。
撮影:湯田陽子
骨盤底筋トレーニングデバイスは、色も形もバラエティに富んでいた。理学療法士が設計したフランスのPerifit(ペリフィット)は、7つのトレーニングプログラムを提供。アメリカのKegelbell(ケーゲルベル)は医療用シリコン製の本体とおもりを組み合わせて使うタイプで、アプリは不要。30・60・120グラムのおもりが付属する。
3Dプリンターでつくる乳房インプラントも
日本女性が患うがんの中で最も多い乳がん。世界でも乳がん罹患者数・死亡者数は増加傾向にあり、乳がんの早期発見を可能にするセルフチェック・デバイスや乳房再建テクノロジーへの注目が高まっている。
iTBra(アイティーブラ)。
撮影:湯田陽子
香港にあるCyrcadia Asia社のiTBra(アイティーブラ)は、乳房に貼ったパッチが乳房組織の温度変化を24時間周期で検出。匿名化されたデータは本社のラボに直接送信され、数分以内にユーザーに結果を通知するという。
MATTISSE(マティス)。
撮影:湯田陽子
フランスの医療系スタートアップ、ラティス・メディカル社は、現在ヨーロッパで臨床試験段階にある3Dプリンター製の乳房インプラントMATTISSE(マティス)を出展。同社によると「1回の簡単な手術で、1年半後には完全な乳房を取り戻すことが可能。インプラントは体内で完全に分解され、消失する」という。2022年7月には、乳がん患者として初めて、マティスのインプラントによる乳房再建手術が行われたと発表している。
ほかにも、避妊や妊活・不妊治療など、さまざまな分野における最新のプロダクトやサービスが勢ぞろいしたFemtech Fes! 2022。今年は女性だけでなく、男性や家族連れ・カップルなども訪れたという。
女性のウェルネス課題の解決・支援事業を行う主催のフェルマータは、今回展示したようなモノやサービスだけでなく、「『女性がセルフケアを重んじる文化』『誰もが自分自身の体の1番の理解者になること』といったムーブメントそのものも、フェムテックの重要な側面」だと指摘する。
「言葉がなかったために、これまで可視化されてこなかったフェムテック市場」(フェルマータ広報)が、文化的な側面も含めて日本にどう広がっていくのか。次回のFemtech Fes!にも注目したい。

(文・湯田陽子)
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