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最高の環境で仲間たちとゲーム漬けの4日間! 初開催の「eスポーツキャンプ」レポート – GAME Watch

 大阪府泉佐野市は、関西空港からスカイゲートブリッジを渡ったすぐのところにある、海に面したのどかな街だ。かねてから「eスポーツ先進都市」を謳い、eスポーツ事業の振興に取り組んでいる当市は、このたび高校生を対象にしたeスポーツイベント「eスポーツキャンプ」を主催した。りんくうタウン駅に直結したイベント会場「オチアリーナ」を舞台に、全国から44名もの高校生が当イベントに参加するべく集った。

 今回が初開催となる「eスポーツキャンプ」は3泊4日のeスポーツ合宿で、種目は全世界にプレイヤーを抱える大人気FPS『VALORANT』。前半の2日間はコーチ陣の指導のもとで練習が行われ、後半の2日間には参加者同士の大会が開催される、盛りだくさんの内容だ。北は北海道から南は九州まで、全国各地から集まった高校生たちが寝食を共にしながら『VALORANT』をプレイし、ゲームのスキルを向上させていくこと、ゲームを通じて同世代のプレイヤーたちとの仲を深めることが主なテーマとなっている。

 昨今は日本でも教育現場にeスポーツを持ち込もうという動きが加速しつつあるように、中高生の生活にとってゲームというものが持つ重要度はどんどんと増してきている。そんな中で行われた「eスポーツ合宿」という新たな取り組みだが、高校生たちはこのイベントから何を学び、何を得ることができたのか。本稿では「eスポーツキャンプ」の様子を、参加者の目線からレポートしていこうと思う。

開催都市泉佐野市

仲間とゲームに打ち込む濃密な4日間

 今回のイベントのメイン会場であり、高校生たちの練習と戦いの舞台となる「オチアリーナ」は、普段はアーティストのコンサートなどに使用されている場所で、全方位が巨大スクリーンに囲まれた広々とした空間が印象的だ。会場には60台ものデバイスがセットアップされており、参加者たちにはそれぞれGtuneのゲーミングPCとiiyamaのモニターが割り当てられ、ゲームに打ち込むには完璧といってよいほどの環境が整えられている。皆自分のゲームタグが背中に印刷されたユニフォームを身に纏っており、真剣なまなざしでモニターに向かう様子はプロゲーマーのようだ。

会場の様子

 今回「eスポーツキャンプ」に参加した総勢44名の高校生たちは『VALORANT』におけるスキルレベルも様々で、始めたばかりの初心者プレイヤーから上位ランクであるイモータルの上級者、中には高校生大会で優勝経験のある実力者もいる。まず初めに実力測定のための練習試合が行われ、各レベルの選手がうまく混ざり合うように9つのチームが編成された。各チームにはひとりずつ専属のコーチがつき、3日目から開催されるチーム対抗戦に向けて、それぞれが練習を進めていく。

 選手ごとの実力はさまざまだが、チーム同士の実力はかなり拮抗しているようで、練習試合を見ているとどこもギリギリの戦いを繰り広げている。それもそのはず、5対5のチーム戦で競い合う『VALORANT』では、実力者ひとりの力だけで勝つことは難しく、安定して勝ち星をあげていくにはチームメイト全員の協力が不可欠だからだ。横に並んでプレイをする選手たちからは、敵の位置を知らせるコールや、「ナイス!」「ドンマイ!」といって味方を鼓舞する声かけが上がっており、その雰囲気は合宿そのものといった様子だ。

横並びでモニターに向かう選手たち

 読者の中には、eスポーツとはいってもゲームの練習とはどのようなものなのか想像がつかない方もいるだろう。しかし『VALORANT』ほどの高度なゲームにもなってくると、ただ遊んでいるだけで上手くなるといったことはなく、上達のためにはしっかりと目標を設定して練習に取り組むことが不可欠だ。例えば敵を素早く認識し撃ち抜くためには反応速度を鍛え、手元の操作を洗練させる練習が必要だし、試合中の自分の役割を理解するためには、座学を通じて各マップや武器の特性を学ぶことが必要になる。また当然、チームごとに戦略を立て、連携をとりながらそれらを実行するためのチーム力・コミュニケーション能力も重要になってくる。

 この戦略・連携の部分がこの合宿の肝といってもいい部分だろう。自宅からオンラインで『VALORANT』をプレイしていると、顔も知らない相手とチームを組んで戦うことになるわけなので、勝つためにはどうしても自分の個人技に頼る必要がある。しかしチームメイト全員で連携をとってプレイするとなると、戦略の可能性は飛躍的に増える。例えば互いの死角をカバーしあって進むことで安全に敵陣に進めたり、敵の動きを拘束するアビリティと敵の視界を奪うアビリティを組み合わせることで一気に戦況をひっくり返せるようになったり、というように。

 選手たちは互いに意見を出し合いながら、自宅でひとりでプレイしているときにはできなかったような作戦を練り上げていく。実戦では互いに声を出し合いながら、それぞれの役割につき、自分たちで考えた作戦を実行していく。そしてこの作戦が成功したときこそが、彼らにとって一番嬉しい瞬間なのだ。こうした過程で彼らは、チームワークの重要性に気づき、コミュニケーション能力を高めていくのである。

戦略について話し合う選手たち

 指導を行うコーチを務めるのは、ゲーム家庭教師サービス「ゲムトレ」で日頃から『VALORANT』の指導に携わるコーチ陣と、ゲスト講師として参加した人気ストリーマーのJasper氏とMOTHER3氏だ。専属のコーチたちは試合中はセコンドについて選手たちにアドバイスを送り、また試合後には車座になって反省会を行い、丹念にフィードバックを与える。ゲスト講師の2名は各チームを周りながら選手たちに声をかけ、会場を活気づける。選手の多くは日頃から両名の配信を見ているとのことで、憧れのプレイヤーを間近で見た彼らの表情はマスク越しにも分かるほど高揚していた。サインを求める選手や「自分のキーボード触ってもらえた!」と言って興奮している選手の姿もあり、高校生らしい微笑ましい光景が見られた。

MOTHER3氏(左)Jasper氏(右)

 「ゲムトレ」のコーチ陣は日頃からeスポーツの指導に携わっているわけだが、高校生をチーム単位でコーチングするのは初めてという方も多いようで、選手たちと試行錯誤しながら練習を進めていた。指導の方法は様々で、試合中の選手たちの動きを録画したリプレイを再生しながら改善点を指摘するやり方や、各マップの画像を使いながら試合の場面ごとの最適な動き方を指導するやり方、中には緊張して思い通りのプレイができないという選手ためにメンタル面の指導をしているコーチの姿も見られた。

ノートを手にチームを指導するコーチ

「どうしたら試合中も落ち着いてプレイできるか」という内容で話し合いをしている

 印象的だったのは、選手たちがただコーチの話を受け身で聞いているのではなく、自分の意見を述べたり、仲間にアドバイスを与えたりしている姿が多く見られた点だ。このように選手たちの自主性が見られるのは、やはり自分の好きなゲームに真剣に取り組める環境があるからこそだろう。合宿の初めには不安そうな表情をしていた選手でも、真面目にゲームに取り組む仲間の姿や『VALORANT』の戦略性の深さに触れることで、合宿が進むにつれてモニターに向かう表情は真剣なものへと変わっていく。ゲームを通じて絆が深まっている様子もひしひしと感じられ、初めはぎこちなかったチームも、時間が経つにつれて声かけが増えるようになり、試合中の連携も少しづつ洗練されていく。

自分たちで意見を出して試合の反省点を議論している

 話を聞いていると、選手たちが今回の合宿に参加した理由はさまざまだ。単純に『VALORANT』が好きだからという人や夏の思い出作りにやってきた人もいれば、将来のキャリアとしてプロゲーマーを真剣に目指しているという人も散見された。しかし彼らが口を揃えて言うのが、「オフラインの環境でチームで『VALORANT』をプレイしてみたかった」ということだ。ネット環境が整った現代では自宅から世界のプレイヤーとゲームをできるのが普通になっているが、その反面、友達と面と向かってゲームをプレイする機会は減っている現状がある。コロナ禍で行動が制限されるようになった今、こうした機会はますます減少傾向にあるといっていいだろう。

 高校生プレイヤーたちの多くは、TwitchやYoutubeなどの配信サービスを通じてeスポーツの盛り上がりを感じている一方で、身近には自分と同じ温度でeスポーツに情熱を傾ける友達がいない。ゲームに真剣に取り組みたいと思っても、志を共にする仲間や背中を押してくれる大人が居らず、挫折を経験するプレイヤーも多い。そんな現状を鑑みると、「eスポーツキャンプ」のようなイベントは彼らにとって、eスポーツに熱中する同世代の仲間と巡り合う千載一遇のチャンスなのだ。イベントの感想を聞いていても、「隣に仲間がいるのがとても新鮮」、「オフラインだと勝った時の喜びが何倍にも増える」といった声が多く、彼らにとってこうした機会がいかに貴重かが分かる。このイベントで培った友情は、きっと今後も継続していくものになるだろう。

ゲストにもらったサイン色紙を見せ合う参加者たち

ゲームを通じてチーム単位で仲を深めていく

 ここで実際の選手とコーチたちにインタビューした模様をいくつかお届けしたい。まずは練習試合で高い勝率を見せていた、SEIZEコーチ(イモータル3)率いる「チーム4」だ。このチームでは高校生大会「STAGE:0」の優勝者であるLeo選手がリーダー的な役割を見せており、チームをけん引していた。味方の選手たちに作戦の指示を積極的に出しており、その実力を遺憾なく発揮している。Leo選手曰く「教えているうちに自分も上達できるので非常にいい練習になっている」とのことだ。

モニターに向かうチーム4

 しかしこのチームが高い勝率を見せている一番の要因は、彼らのチーム力の高さだろう。彼らは練習時間の後もSwitchで『スマッシュブラザーズ』や『桃太郎電鉄』をプレイして遊んでいたらしく、そのためか試合中も試合後も非常に良好な雰囲気を漂わせている。ラウンドを勝っても負けても互いを称える声が飛び交っていて、アビリティを使う際の連携も上手くとれている。ひとたび試合が始まってしまえばランクの差など関係なくなるようだ。彼らを見ていると、楽しみながら試合に臨むことがいかに重要かを再認識させられる。

メンバー同士で談笑している様子

 続いてSleepyコーチ(レディアント)率いる「チーム7」、全チームの中で唯一女性プレイヤーを擁するチームだ。このチームも試合中の雰囲気が非常によく、勝っていても負けていても選手たちは常に笑顔で、その様子が非常に微笑ましい。チームをけん引するのはイモータル3の実力者Sota選手で、試合中は冷静にチームメイトに指示を出している。「自分が教える立場になることが多いが、皆の意見を聞きながらプレイできるこの環境はとても新鮮で楽しい」とのことだ。

他チームとの練習試合に取り組むチーム7のメンバー

 選手たちに3日目からはじまる大会に向けての意気込みを聞くと、「やるからには優勝したい」と強気のコメントを言ってくれた。どうしたら優勝できると思いますか? と聞くと、とにかくいっぱい声を出すこと、コーチからもらったアドバイスを忘れずに各々の役割を全うすること、と答えてくれた。

写真撮影に応じてくれたチーム7

 2日間にわたって「eスポーツキャンプ」の様子を間近で取材したが、eスポーツという同じ情熱を通じて、仲間たちと絆を深める参加者たちの姿を見ていると、このイベントは大いに成功したと言って良いのではないかと思われる。実際に見るまでは、今までにないeスポーツ合宿という取り組みを懐疑的に思っていた部分もあったが、蓋を開けてみると参加者たちはただゲームをプレイしているだけではなくて、仲間たちと目標を設定して練習を共にすることで、ゲーム以外にも活かせる普遍的な協調性やコミュニケーション能力を身に着けていた。eスポーツを通じて人間的に成長していく高校生たちの姿を見ていると、やはりeスポーツには教育的な価値があるのだと実感させられる。

 今回のイベントは大阪府泉佐野市主催のもとに開催されたが、これがモデルケースになってeスポーツ合宿の有意義さが周知されれば、より多くの自治体が同じような合宿イベントを開催するようになるかもしれない。そうすれば、全国大会などといった取り組みと相まって、高校生のeスポーツシーンはますます振興していくだろう。未だ高校生がeスポーツに打ち込むことに否定的な意見を持つ人が多いのが現状だが、シーンの盛り上がりと共にこうした偏見の目が取り払われ、高校生たちが存分にeスポーツに取り組める環境が出来上がっていくことを願うばかりである。


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