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CES2022で「メタバース」は本当に盛り上がったのか? オフラインとオンライン双方から見た世界のトレンド | Mogura VR

2022年1月に米国ラスベガス、そしてオンラインで開催された、世界最大規模のエレクトロニクス展示会CES2022。注目のトピックや現地で展示されていたXR/メタバース関連の最新情報、トレンドについて、フリージャーナリストの西田宗千佳氏、株式会社ShiftallのCEOを務める岩佐琢磨氏を迎え、Mogura VR 編集長の久保田瞬が話を伺いました。

(※本記事は、2022年1月19日に開催されたイベント「CES2022 報告会〜注目のXR/メタバース分野を語る〜 Future Tech Meetup #8」の書き起こしレポートです)

バズワードと化した「メタバース」の定義について考える

久保田瞬(以下、久保田):

本題に入る前に、2022年のCESを語る上で外せない「メタバースの定義とは何か?」について、皆さんのご意見をそれぞれ教えていただけますか?

西田宗千佳氏(以下、西田):

僕の定義はシンプルで、ひとつひとつのサービスやアプリケーション、つまりバーチャル会議がメタバースなのか、コミュニケーション系サービスの「VRChat」がメタバースなのか、他にもヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使う必要があるかどうかといった話は、割とどうでもいいと思っているんですよね。

ポイントは一個のメタバース、一個のサービスで「ひとつの世界しか存在しないかどうか」だと思います。例えばVRChatは複数のインスタンスやワールド、バーチャル空間があるからきちんと成立しているわけですよね。VRChatは、VRChatの中である程度色々なことができるようになって、あれだけ盛り上がっているわけです。逆にひとつの世界しか存在しないのであれば、それは会議やイベントというサービスであって、メタバースではないと思います。複数のサービスが横につながり始めて、それらを自由に選んだりジャンプできる時代がきて、初めてメタバースなのかなと。僕の定義では、Webと同じように複数のサービスがつながることです。例えば1995年のインターネットが今のメタバースだと思っています

余談ですが、2000年にはもうAmazonが立ち上がっています。そう考えると巨大なビジネスが立ち上がるまでにあと5年くらいしかないんですよね。5年の間にチャンスがあるならみんな取り組むわけです。そしてその間にどんなアプリや企業が出てくるのか、という話が盛り上がるとするならば、「実は全然時間がない」というのは1つのポイントかなと思っています。

久保田:

岩佐さんはいかがですか?

岩佐琢磨氏(以下、岩佐):

僕のメタバースの定義は「デジタル空間上の社会」ですね。そこに人がいて、社会性を備えた体験ができるというところが、メタバースだと僕は理解しています。例えば、スクウェア・エニックスさんが「ドラゴンクエストメタバース」的なものを作ったとして、そこに他の人がいなければコンテンツが特定のお客さまだけに届くだけで、それはメタバースではないと思います。仮に他の人がいるマルチプレイヤーです、と言われても、そこの上で人々が生きていて、社会的なやりとりがなければメタバースではないと思います。

つまり人々がお互いの間で何らかの社会的なやりとりができる、例えば誰かと何かを売り買いしたり、あるいはケンカしたり愛情を育んだりといった社会の経験すべてを含む、現実の社会と似たような事象がVR空間ないしデジタル空間の上で行われることが、僕の中でのメタバースの定義かなと思っています。

例えば会社で設計開発をするために、一緒のバーチャルな空間で物をこねることしかできない、みたいなものは社会ではないですよね。それはZoomを社会だと言っているようなものなので。

岩佐:

まさに社会ですよね。

西田:

新しい社会や生活圏ができることがメタバースであって、仮想であることはあまり意味はないなと。逆に言えば仮想であっても新しい生活圏や社会圏がそこにできるということなのかな、という気がしています。まさに岩佐さんの定義でバッチリだと僕は思っています。

久保田:

Shiftallさんは今回のCES2022でVR関連デバイスを多数発表されていますが、そのあたりも含めて、岩佐さんがどのようなプロダクトに取り組んでいるのか軽くご紹介いただけますか? 岩佐さんのバックグラウンドが分かると、どのようなニュアンスで話しているのかが分かりやすいと思うので。

岩佐:

わかりました。改めまして、Shiftall代表の岩佐です。VRでは和蓮和尚(@warenosyo)という名前で活動していまして、個人では昨年「仮想空間とVR」というメタバースについての本を上梓しました。

岩佐:

仕事ではパナソニックの「LUMIX」のデータをVRChatやclusterで使えるようにするバーチャルデータ販売を試したりと、一昨年からいろいろとVR関連の活動を始めています。

昨年は「HaritoraX」という、いわゆる「フルトラ(※フルトラッキングの略)」、VRの空間の中に全身の動きを入れるためのデバイスを3万円以内で市場に投入し、たくさんの方に使っていただいています。「こんなややこしい機械をつけてVRを体験するなんて、普通の人はしないでしょう」と思われるかもしれませんが、すでに日本国内だけでも弊社製品だけで数千人、他社の製品も含めると、何万人もが全身でVRに入っていると思います。

ちなみにHaritoraXは購入者の60%が10〜20代で、いわば若者文化の商品だと思います。先日米国でも販売を開始したんですが、こちらもすぐに在庫切れになってしまいまして。皆さんからの支持は得られていると思います。

CES2022ではVRヘッドセットの「Megane X」、口につける防音マイクの「mutalk」、そしてVR空間の中で暑さ寒さを感じられるデバイスの「PebbleFeel」の3種類を発表しました。同時に展示していた「HaritoraX」は、ありがたいことにCES2022のイノベーションアワードをいただくまでに至りました。

VRヘッドセット「MeganeX」が発表! VRChat対応の冷温デバイスや音漏れ防止マイクも登場 | Mogura VR

VRヘッドセット「MeganeX」が発表! VRChat対応の冷温デバイスや音漏れ防止マイクも登場 | Mogura VR

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余談ですが、僕がHaritoraXをつけている際のビジュアルがあまりにぶっ飛んでいるので、The GuardianやTIME等の一流雑誌にも掲載され、僕のすごい格好が全世界に広まってしまいました(笑)。

久保田:

ありがとうございます。現地で展示された岩佐さんには、後ほど詳しくお話をうかがっていきます。

現地とオンラインの「ハイブリッド開催」は「強行軍」だった?

久保田:

ありがとうございます。それでは改めてCESについて紹介します。CESとは毎年1月頭にアメリカのCTAという業界団体が主催する、世界最大規模の展示会です。家電の見本市という言い方を未だにするケースもありすが、しばらく前からCESは「エレクトロニクスの総合展示会」といった路線で展開しています。

久保田:

右は2020年に撮った写真で、言うならば“かつてのCES”です。今ではこんな光景はあり得ないわけですが……例年は数十万人規模で開催される、街を上げてのお祭り騒ぎなイベントになります。2020年の1月は辛うじて開催されたのですが、2021年からはオンライン、もしくは現地とオンラインのハイブリッドという形になりました。

岩佐:

CES2020の開催期間は1月10日までで、確か「1月5日に中国の武漢市で1人目の新型コロナウィルス感染症の死者が出た」というニュースが1月9日に報道された、そんなタイミングでしたね。

西田:

あの時に「もしかして風邪が流行っているんじゃないか?」という噂はあって。日本に帰ってきてみたら大変なことになっていた、くらいのタイミングだと思ってください。社会が急速に変化していく中で、ギリギリ最後に行われた大きなイベントだった、という風に考えてもらえたら。

久保田:

CESは全世界から人が集まるイベントなので、例年通りであれば2020年のイベントも中国勢による大量のブース群が出展し、それだけで1つの建物を使い切るような規模で行われる予定でした。2021年は打って変わって完全オンラインでの開催に。最初の頃は「現地も頑張る」とアナウンスしていたのですが、結局オンライン開催となり、Web上ですべての講演や展示を見て回る形になりました。

2022年はすでにコロナ禍に入って2年近く経ちますので、オンラインでの開催だとなかなか盛り上がり辛いということで、出展も半分ぐらいに減ってしまっています。開催直前のオミクロン株流行により現地+オンラインとなりました。現地に行った岩佐さんにお聞きしたいのですが、CESは「けっこう無理して開催した」という雰囲気だったんでしょうか?

岩佐:

確かに強行した感じはしましたね。基本的に大企業はいなくて、スタートアップが元気、といった状況でした。西田さんも記事に書かれていましたが、大企業は問題を起こさない方向に倒せばいいとして、スタートアップはそんなこと言ってられないぜ、という空気でしたね。

現地のEureka Parkは2020年ほどではありませんが、すごくたくさん人がいまして。逆にLVCCセントラルなどの大企業エリアはスカスカで、かなり二極化した感じですね。なので、見た感じは「無理を承知で押し切ったなあ」と。

西田:

僕も現地まで行く予定だったんですが、直前で取りやめています。ちょうど近いタイミングで大企業やプレス関係者も一斉に参加を見合わせてしていたので、外から見ていても、現地はかなり感染対策に気合いを入れてやるか、もしくは無理を承知でやるかというのが実情だったと思いますね。

久保田:

公式発表だと来場者は約4万人で、だいぶ現地開催も人数減ったなと。ただ海外からの来場者が30%いて、世界中から人はCESに行っていたということではありますね。

西田:

ちなみに通常、アメリカの来場者よりも、海外の来場者の方が多いんですね。つまり通常は言わないのですが、「この状態でも30%いらっしゃいました」ということを言いたかったんじゃないかな。

CESのトレンドは、本当に「メタバース」だったのか?

久保田:

まずは最初2人に、CES2022の注目ポイントを振り返っていただければと思います。最初はオンラインで参加の西田さんからお願いします。

西田:

では私から。「CES2022ここが見どころ(だったかもしれない)」ということで話したいと思います。オンラインで僕が見ている風景と、現地やプレスの風景は大きく違っていたかもしれないですからね。

西田:

まず、様々なところで言われているように「CESのトレンドはメタバースだったのか?」という問い。これについては「ぶっちゃけ微妙」だと思っています。色々取材しましたが、メタバース関連展示が満載だったかというと、そういうことはなかった。ただCTAは未来予測として、10年から20年後にはメタバースが非常に大きな産業になるとアナウンスしています。彼らは「メタバースの展開は今年のCESから始まる」という言い方をしているので、CESのテーマにおいてメタバースというものが価値がなかったとか、まったく盛り上がっていなかったとか、そういうことではありません。

これまでもVR/AR/XRの形で、きちんとブースや出展も出ていたので、今年に関しては継続的なビジネスをやっていたところがメタバースに「バッジがえ」をしたのだろうと思っていただければ。

会場映えが現地開催の決め手に? 新しいテクノロジー×自動車

西田:

次に「なぜCESが今回現地開催にこだわったのか?」。僕なりの見解では、なんだかんだ自動車なのかなと考えています。自動車って大きくて動くものなので、会場映えするんですね。自動車は動画や写真だけになりがちなオンラインよりも現地の方が向いているので現地開催したのかなと。それから広いところに作った、新しい会場のウエストホールを使いたかったのでしょう。

世界的にみて1番のホットトピックは、ソニーのEVへの参入発表です。AIやセンサーをうまく使って、外界の情報をうまく取り入れ、しかも快適なドライビングできる要素をもった自動車を作るというのがソニーの考え方のひとつです。そういう新しいテクノロジーを使った自動車ですから、XRとはセンサー技術等々の面から見れば関係ないわけではありません。

また、SNSでバズっていたのはBMWの新しいコンセプトカーです。車の表面に特殊な加工がしてあって、白から黒へと塗装が変わります。これこそ現地に置いた本物の車をみんなに撮ってもらい、SNSでバズらせるのが目的だと思いますね。

西田:

これ、よく見ると三角形のポリゴンっぽいですよね。車の全体に三角形に細かく切ったE Inkをキレイに貼り付けた形になっていて、E Inkの白から黒への変化をうまく使い、表面のデザインをやっていると。こういうものをアピールしやすい場所がCESと考えてください。

世界の認識は「デジタルツイン」も1つのメタバース

西田:

先ほど「メタバースがCESで全然盛り上がらなかったかというと、そういうわけでもない」と述べましたが、CESではメタバースのことを「デジタルツイン」、要はデジタルの中に現実の世界を置くという文脈で扱っているケースが多かったからなんですね。

特徴的だったのはP&Gです。彼らはIT技術に積極的で、2020年頃からいわゆる「IoT家電」
をたくさん作っていますが、「今年はプロモーションのためにメタバースを作りました」と話していました。

ただし見てもらえばわかるんですが、そこまで大したものではないんです。植物園の内部をデジタル化して再現したもので、彼らは「今プロモーションにメタバースを取り入れることが大切だ」という流れで積極的に参加しているわけなんですね。マーケティングの観点からメタバースを見ている企業がいて、CESを活用していたというのもポイントだと思ってください。

西田:

もうひとつメタバース・デジタルツイン関連で注目してほしいのは、ソニーがHAWK-EYEという、自社の子会社を使って発表していた内容です。HAWK-EYEは、スポーツでのボールがラインからアウトしたのを自動的に判定する技術を持っている企業ですね。ボールの判定はもう十分できるので、映像から自動的に選手のモーションを全部とって、スタジアムや会場の様子をデジタルツイン化する技術として、アピールしているわけです。昨年のテクノロジー・デイでは、HAWK-EYEのカメラを使って、サッカーの試合をに全て自動的リアルタイムでキャプチャして、デジタルツイン化しています。

そのデータを生かすことで、エンターテインメントとしてスポーツをもう1度観たり、ゲームとの連携に使ったりできます。これもメタバースの1つ、デジタルツインの活用例として考えることができると思います。

で、また別のメタバースの捉え方もあって。自動車会社のヒュンダイはどう捉えていたかというと「メタバース=テレイグジスタンス」なんですね。彼らはロボットメーカーを買収しているので、それを使って火星のような遠隔地、あるいは工場内をVRやタッチパネルを使ってロボットをコントロールするといったメタバース活用をアピールしていたわけです。

これ自体、日本のいわゆる“メタバース”と捉えるとズレがありますが、米国におけるメタバースだと考えれば、デジタルツインを使った遠隔地での活用も、メタバースの1つだとCESでは捉えられていた。そう見ることもできるかと思います。

メタバースの初代勝者はクアルコム?マイクロソフトとも提携

西田:

発表の中でおもしろいと思ったのはクアルコムです。クアルコムは、メタバースの初期の勝者になったのかなと。クアルコムはマイクロソフトと提携してARのプラットフォームを一緒に作り、しかもそれに彼らのSoCである「Snapdragon」を使うと発表しました。

西田:

今もMeta Questシリーズを含め、多くのVRヘッドセットがクアルコムのSOCで動いています。現実的にクアルコムの協力がないとデバイスが作りにくいという状況にあるわけです。それに加え、大手のマイクロソフトとうまくパートナーシップを組み、ARを運営しようとしています。SoCを持つ企業が大きな力を発揮し、その中でもクアルコムが勝者になっているというのが、発表で見えてきました。

クアルコムがマイクロソフトと協業。ARグラス用チップの開発とソフトウェアプラットフォーム統合へ | Mogura VR

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Oculus Rift 登場から10年。新世代デバイスへと移行中

西田:

今年は2012年に「Oculus Rift」のDKが最初にクラウドファンディングで登場してから10年経つのですが、この10年間で出てきたVRHMDが「新世代」に切り替わるタイミングだったのかなと思っています。その1つがMeganeXなんですけど、それは岩佐さんにお任せしましょう(笑)リアル開催されたCES2020でパナソニックの技術が発表され、時間を経て製品化されるのは感慨深いものがあります。

もうひとつがPlayStation VR2(PSVR2)です。ゲーム機と接続して使う専用デバイスなので、業務用に使う方はあまり気にしていないかもしれませんが、大量に普及するデバイスになると思います。エンターテインメントも含め十分見どころがあるかなと。

デザインは発表されていないので、なんとも言えないのですが、PSVR2は「フォービエイテッドレンダリング(中心窩レンダリング)」「アイトラッキング」の組み合わせを使った、コンシューマー向けのそれなりに低価格のHMDであることが重要になります。

【PSVR2】PlayStation VR2のスペックや新機能を紹介 他VRヘッドセットとも比較 | Mogura VR

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「PlayStation VR2」発表! 4KHDRやアイトラ搭載で高画質化、ヘッドセット振動機能も | Mogura VR

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西田:

フォービエイテッドレンダリング(中心窩レンダリング)について説明すると、人間は網膜の中心部だけ高い解像度で把握できるようになっているいます。したがって画像の緑と青の部分でレンダリングする解像度を変えることで処理をうまく軽減し、人間の感覚的には、解像度が落ちていないように見せるという、パフォーマンスを維持するための技術です。

今までのフォービエイテッドレンダリングに関しては、アイトラッキングの仕組みが搭載されているデバイスはあまりなく、主に中心窩が動かない形で、つまり固定して実装されていました。「Oculus Go」とかはそうですね。これにアイトラッキングがつくようになると、この緑の領域を自分の目が向いた方に変えられるようになり、より最適な画質を目指しやすくなります。ゲーム機のような、ある程度決まりきったデバイスで作る分には、こういうものが重要なのかな、とは思いますね。

これも含めて「CES2022で、いきなりメタバースが大きく花開いた」という言い方はしづらいですが、新しいハードウェアが出ることで新しいビジネスの基盤ができ上がったのがちょっと見えた、というのが今年のCESかなと思っています。

久保田:

ありがとうございます。続いて岩佐さんお願いします。

現地でしか手に入らないCES2022生情報

岩佐:

まず西田さんのお話がバーチャルサイドから見たお話だったので、コテコテにリアルの話をしようと思います。CES行ったことある人にとっては衝撃の写真だと思うんですが、西田さん、これですよ。

西田:

ふつうは初日というか、三日前ですらこんなに空いていないですよね(笑)

岩佐:

初日の午後、つまり一番のホットタイムなのに、信じられないくらい人がいないんですよ。さっき西田さんが、BMWの話をしていたのでスライドに入れたんですが、あの車は現地で見たらこんな感じです。動画で観たらそんなに変でもなく、わりかしうまく作っているなという印象でした。

岩佐:

CESなので毎年変な人がいっぱいいて、今年は人間LiDARみたいなことをやっている人もいました(笑)。ブース持たなくても、こうやっていると捕まえて取材してもらえるんで盛りあがってました。

岩佐:

さて、現地は正直言ってどうだったかというと、公式発表では参加者が例年の約4分の1、出展社は例年の半分ぐらいだとされていましたが、出展社は3分の1も出てないんじゃないかと思います。事実上の出展中止に近いですが、ブースは出展しているのも入れると、3分の1から4分の1ぐらいしかいなかったのかなと。

大企業があまり元気がない一方、ベンチャーやスタートアップは「物見せてなんぼ」の精神があって元気でしたね。ぶらぶら歩いていたら「それおもしろいじゃん!」的に取材や商談が生まれて……といったセレンディピティがあると。ニューヨーク系の大手メディアはほとんどいなかったので、メディアの参加も閑散としていました。

とはいえ気合の入ったメディアはみんな来ていたので、出展社やメディアは少ないものの、結果としてはメディアマッチングがうまくいったり、メディア取材を目的とした人はしっかり目的を達成していたかなと思いますね。

岩佐:

あと現地でびっくりしたのが、韓国勢の勢いですね。2020年のCESではEureka Parkにフレンチテック企業が400社くらい出て「フレンチテックがすごい」と言われていました。フランスやオランダなどヨーロッパのスタートアップに、比較的フォーカスがあたりがちでしたが、今回は韓国勢が460社出展。現地であるアメリカが1位ですが、事実上の全出展社の中では韓国が2位と。スタートアップエリアの3分の1は、韓国勢というぐらいに、ものすごくレベルが高くて展示の数も多かったです。

岩佐:

次にメディアの話題は自動車がほとんどで、ついで意外と多かったのがメディカル&ヘルスケア、スマートエナジー、そしてメタバースですね。実際の出展がどうだったかというより、メディアの話題としてはこの辺の出展社のことが、メディアに取り上げられるのが多かったなと思いました。

前に現地に行っていた方にはおもしろい話だと、今回LVCCサウスの1階と2階が閉鎖されるという前代未聞のことが起きまして。サウスプラザの中国勢だけで1個のテントができたところも閉鎖。代わりにウエストホールが新設されましたが、そこら中に空き地と化したブースがあって大変でした。周りの道はガラ空きで、タクシーの待ち時間がないんですよ。

西田:

それはかなり衝撃的ですね。

岩佐:

1日目でも2日めでも、ノースの前のタクシー乗り場が0分待ちでした。VenetianとLVCCを結ぶシャトルバスが15分で行き来できちゃう。

西田:

今までだと「タクシーに乗るために大体30分かけないといけない」くらいのイメージです。

岩佐:

国の話をしておくと、とにかく今年のCESは韓国ですね。中国のワクチンはアメリカでは有効でないということで、中国勢はほぼ来ないと。フレンチテックはパワフルではあるものの、今回はパワーと質で韓国の方に勢いがありました。フランス勢は「テクノロジー的には大したことないけど、デザインがかっこいいね」というのが多かったのですが、韓国は圧倒的にデザインもいい。技術も精緻に作り込まれている韓国のスタートアップに圧倒されていた印象です。また中国勢に元気がなかったので、日本勢はそれなりに存在感あったかなと思います。

やっぱりみんな「現実」派? フィンテック・NFT・ブロックチェーンよりも、大盛上がりのメディカルテック・スマートエナジー・ペットテック

岩佐:

出展トレンドとしては、実はメディカルテックがすごかった。日本でいうところのPMDA、アメリカでいうFDA等の認可を取得しないと提供できないような、いわゆる医療機器に相当するアプリケーションやハードウェアを取り扱うところが非常に多く出展していました。後半AR/VRの話につなげていくんですけど、「フィットネス×専用デバイス×サブスク」というPelotonが成功させたモデルのコピーも多かったです。

岩佐:

3年前からトレンドになっていた、スマートエナジー系は今年もさらに盛り上がりました。特に多かったのは水循環ですね。世界はまだまだ水道がしっかりしてないところが多く、水道があっても水不足で悩まされている地域はたくさんあります。なので水をキレイにする系と、電気を高効率に貯めて、EVや家庭に供給しようという機器やサービスが多かったですね。

またフィンテック、NFT、ブロックチェーンのブースエリアも設けられていましたが、出展社の閑古鳥が鳴いていた印象です。モノを見に現場に行く人が多い中のに、実際のモノが多くなかったので、この手の展示は盛り上がらないなあと。

こうした状況を見ると、VR/AR/メタバースは確かに盛り上がっていたけれど、他と比べてそこまででもなかった、という西田さんの意見には同意です。

それからペットのためのテクノロジー、ペットテックも前回に比べて、大きく盛り上がっていた印象です。

定義も混沌としつつあるメタバース。BtoBの主流は「デジタルツイン=メタバース」へ

岩佐:

そして今日の本題のメタバースですけど、いわゆるVRの領域の話をしていくと、基本的には西田さんのおっしゃる通りだと思います。デジタルツインやテレイグジスタンスとメタバースが混合して語られていました。

これはIoTのときもそうだったんですが、機能拡充しているだけの物をIoTと呼ぶケースもあれば、ちゃんとクラウドで機器をコントロールしているハードウェアもIoTと言われたりしていて。バズワードが生まれるとこういうごちゃごちゃの状態が発生します。

今回の「メタバース」もほとんどの展示がテレイグジスタンスやデジタルツインだったりで、いわゆるVRSNSを中心としたメタバースや、仮想空間の中に住む、仮想空間の中で人と何かを楽しむという文脈は非常に少なかったという印象がありますね。特にBtoBはほぼ「デジタルツイン=メタバース」という構図になっていると思ってください。例えば今回韓国勢が強かったというのもあり、ヒュンダイのアプローチは非常にわかりやすく、プレスカンファレンスで注目を集めました。ヒュンダイは「メタモビリティ」と言ったりしていましたが、結局のところ「ファクトリー管理のデジタルツイン」に終始しています。現状ちゃんと存在して、マーケットもあり、比較的ステイブルになりつつあるBtoCといえばVRSNSですが、関連展示はほぼなしと言ってよかったですね。またBtoBのARはマーケットこそさほど大きくないものの、じわりじわりときている分野ですので、例年並に盛り上がっていたなという印象です。

岩佐:

僕は去年の11月にAWEにも行っていまして。こちらはサンタクララの小さいイベントですが、VR/ARの文脈に限ると世界トップクラスのカンファレンスです。で、CESはそこに出てる人たちとプレイヤーが変わらいない。むしろAWEの方が出ているプレイヤーが多かったくらいです。どっちを見るのかという二択が生まれたら、来年も同じくらいの出展社数だったらAWEに行った方がいいなあ、という感じはしました。あとはCESにMeta(旧フェイスブック)が出ていなかったというのも大きいと思っています。

他にもロッテの展示は、本質的なメタバース、つまりデジタルツインではない「バーチャル空間の中で、お客さまを楽しませて、そのお客さまに商品を買っていただいたり、ブランドのファンになっていただくのか?」という展示をされていて、ここは面白かったですね。

ちょっとヒュンダイに戻りますが、彼らがメタモビリティと言っていたのは、まさにテレイグジスタンスでした。カンファレンスだけだったのですが、ロッテが提携しているボストンダイナミクスの有名なロボットが火星にいて。ロボットのカメラが現実空間の人の目の代わりになっていると。人が火星の石に触ろうとすれば、実際にロボットが触って、手からフィードバックを感じるデモ映像を作っていましたが、それテレイグジスタンスだよねと。確かにおもしろいコンセプトではあるものの、新しさはないと感じました。

あとサムスンが3DアバターソーシャルアプリZEPETOの展示をしていました。これは比較的本来のメタバースに近い展示です。

(後編に続く)


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