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史上初のインフルエンサー向けのゲームショウに。「東京ゲームショウ 2021 オフライン」レポート(Impress Watch) – Yahoo!ニュース

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 筆者は現地担当として初日から幕張の会場に通い詰めたが、1996年の第1回から通い続けている人間として、過去に経験したことのない特異なショウだと感じた。今回のオフラインイベントが、今後の東京ゲームショウのあり方を変えるターニングポイントになるのか、逆に今年だけの特異点として記憶されることになってしまうのかはわからないが、現場から見た「東京ゲームショウ 2021 オフライン」はどういうものだったのか、メディアとしてどう感じたのかをまとめておきたい。

■ 1/10規模となったオフライン会場

 まず会場入りして誰もが痛感するのは、「狭い!」ということだ。今年はわずか第8ホールの1ホールのみで、近年のTGSは10ホール構成だったから単純計算で1/10の規模に縮小化されたことになる。筆者も世界中の様々なゲームショウを見てきたが、これほど小規模なのは経験がない。思わず初参加した営業担当に「これが東京ゲームショウだと思ってはいけない」と釘を刺したほどだ。

 人気クリエイターやタレントの登場とともに、来場者が通路一杯まではみ出して怒号が飛び交う風景や、年々きわどさを増していたコンパニオンの存在感と、それを撮りに来るカメラマンたちのせめぎ合い、あるいは人気が高まりすぎてどんどん遠方に追いやられるコスプレゾーン、開幕全力ダッシュが風物詩の物販コーナーなど、とにかくたくさんの人とそのエネルギーで満たされていた会場を二十数年に渡って見届けてきた筆者としては、まるですべてが“邯鄲の夢”であったかのようなわびしさを覚えた。

 出展内容はゲームか、ゲームデバイスかに限られていた。賛否両論ありつつも、ゲーム業界が主催するゲームファンのためのイベントとして、主役のゲームのみならず、コンパニオンの撮影、コスプレ広場、物販コーナー、コラボフード、eスポーツ大会、ゲストとの交流、ファミリー向けのキッズコーナー、その後の秋葉原でのつかの間のオフ会までひっくるめて東京ゲームショウだとするなら、ゲーム以外のほとんどすべてが跡形もなく失われてしまっていたのはとても寂しい気がした。

■ 1日5,000人以下の入場制限。SIE、スクエニら大手が不参加

 こうした前例のない寂しいゲームショウとなったのは当然理由がある。会場である幕張メッセ側から、1日あたりの入場者数を5,000人以下に抑えるように要請されていたためだ。この時点で、オフラインイベントが小規模になることは必然だった。

 要請に従うために一般入場を断念し、その代わり、メディアに加えて、ゲームと比較的親和性の高いインフルエンサーを招待する形に切り替えた。ブース規模は各社最小限とし、出展内容はステージイベントを避け、ゲームの試遊をメインにする方向で調整。結果として「それではオフラインで出すメリットがない」と判断し、オンラインのみの出展を決断するメーカーも相次いだ。

 わかりやすい例では、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)、スクウェア・エニックス、ガンホー・オンライン・エンターテイメントといったメーカーがオフラインでの出展を見合わせ、そのほかMicrosoft(Xbox)やUbisoft、Electronic Artsといった欧米メーカー、CygamesやDeNAといったモバイルゲームメーカー、YouTubeやOculusといったプラットフォーマーなど、挙げれば切りがないが、多くのメーカーが出展を見合わせていた。

 ただ、出展見合わせの理由が、必ずしも新型コロナの影響だけではない事に注意が必要だ。特にSIEは、ソニーと一体化してからというもの、グローバル戦略の中でゲームショウへの出展について大幅な見直しを図っており、E3は毎年出展を見合わせている。仮に今年フルスペックのTGSが開催できていたとしても、SIEは出展を見合わせていた可能性がある。

 スクウェア・エニックスは昨年に続いて自社配信を実施。メーカーとしては最大規模の配信で、同社は以前からTGSやE3などでオンライン配信を実施してきたこともあり、こなれた感すらある。例年、「FFXIV」をはじめとした体験重視のコーナー、大型のステージによるイベントを重視してきた同社にとって、今年のオフライン会場は魅力的に映らなかったのだろう。

 もともとゲームは、オンライン配信と相性が良いこともあり、昨年の東京ゲームショウで、奇しくも多くのメーカーがゲームショウがオンラインで成立してしまうことに気付いてしまった。今年は出展見送りの理由に「新型コロナの影響」という理由が付けられたが、本当のところはどうだったのか、それは来年以降に明らかになるだろう。

■ 世界的に見ても先進的なインフルエンサー向けの出展構成

 その一方で、出展していたメーカーは、まさにメーカーの個性が表れた、小さいながらもこだわりが感じられるブース構成だった。共通していたのは、インフルエンサー向けの出展構成となっていたところで、写真や映像を撮りやすい展示や、あえて豪華なソファや飾り付けなどをして“映え”を狙う展示、顔出しをしないインフルエンサーに向けては、画面と声だけの撮り下ろし映像が撮りやすい試遊台を用意。会場では至る所で映像を撮る姿が見られた。

 ゲームファンは「そうなのか、ふ~ん」と何気なく読み飛ばしたかも知れないが、開発中のビルドを直撮りして動画で垂れ流すという行為は、実はかなりハードルが高く、ストレートに言えば、メーカーがとてもイヤがる行為だ。予期せぬ不具合が映り込んでしまったり、開発途上の仕様が世に出て、発売前から悪いイメージが付きかねないからだ。過去に東京ゲームショウに行かれた人なら、試遊台に「撮影禁止」とデカデカと書かれ、不届き者が現れないか係員が目を光らせていたことを記憶しているだろう。あれはそういうことだ。

 写真ですらそうなのだから、動画などはもっと厳しい世界なのは想像できると思う。それが今回は取り放題、流し放題だったのだ。そういう意味では、アフターコロナを見据えて、新たな東京ゲームショウの姿を模索する上で、かなり踏み込んだ取り組みをしていたと思うし、結果としてインフルエンサーがゲーム報道のあり方について風穴を開けたのは間違いないと思う。

 出展メーカーの中で上手いなと思ったのはコナミだ。出展メーカーの中でほぼ唯一、コンパニオンをフルセットで揃え、来場者に向けてパンフレットを配ったり笑顔を振りまく……のではなく、「パワプロクン ポケットR」を一緒にプレイして、プレイ後には記念撮影にも応じるという接待役を担っていた。これは行列ができるほどの人が集まってしまうとたちまち破綻してしまうシステムだが、今回ぐらいの混雑度なら、ちょうど上手く回っている印象だった。ゲームの体験自体はオンラインでも可能だが、こうしたコンパニオンと一緒に遊ぶ、記念撮影を撮るといった体験は現地に行かないとできない。オフイベントのロイヤリティを高めるうまい施策だと思う。もっとも、今回は視聴者に「楽しそう!」と感じさせたところで現地に行けないわけだが。

 各社が与えられた条件下で奮闘する中でひとつ気になったのは、来場者がやけに少なかったことだ。関係者によれば、込み込みで5,000人を超えないように、2,500人のインフルエンサー、その関係者を招待したということだが、最初の平日2日で訪れていたのは、それぞれ数百人ほど、土曜日に入ってやや増えたが、それでも500人程度と言った感じで、常時かなり空いている印象があった。関係者に事情を聞いてみると、想定よりもインフルエンサーの参加が少なかったという。招待されたものの、新型コロナの影響を鑑みたのか、台風の影響で参加を避けたのか、単に参加する価値がないと思ったのか、細かい事情は分からないが、一般来場者の代わりにインフルエンサーを充てる施策は、思ったほどうまくいかなかったようだ。

■ 東京ゲームショウは、誰に向けて何を展示すべきなのか?

 そういう意味で、今回もっとも貧乏くじを引いたのはメディア、もっと言えばゲーム専門メディアだったかもしれない。インフルエンサー向けの試遊予約システムはお世辞にも使いやすいとは言いなかったし、顔出しNGのインフルエンサーに配慮して撮影は完全許諾制になり風景撮影自体が難しくなり、そもそもビジネスデイの設定がなく、ぶらさがる相手が会場にいなかったりと、率直に言ってとても取材がしにくいイベントだった。

 付け加えるなら、朝から会場を回って夕方ホテルに戻ると、また18時から24時まで配信がガッチリ入っているという“連続14時間ショウ”は、さすがに体力が持たないと感じた。なぜこんな長時間のイベントになっているのかというと、配信は海外を強く意識した時間割になっているからだ。東京オリンピックが、海外配信の関係から遅い時間から人気種目が行なわれたのと同じ理屈で、北米、欧州の真夜中を外す時間帯で放送しようとするとどうしても夜になるわけだ。

 さらに付け加えるなら、これは筆者や他のメディアのみならず、メーカー関係者も「ヒドい」とぶりぶり不満を漏らしていたのは、「日本ゲーム大賞」が、東京ゲームショウ オフライン会場ではなく、外のスタジオから配信されたことだ。事務局に確認したところ、「配信に必要な設備を整えるため」ということだが、会場内にも立派な3つの配信スタジオが用意されており、実際の配信を見ても、会場のスタジオで配信できなかったとは思えない。日本ゲーム大賞の授賞式は、それ自体が東京ゲームショウのハイライトの1つであり、メディアのみならず、業界関係者も数多く駆けつけ、受賞を喜び、交流を楽しむ場になっていた。おそらく事務局にも不満の声は届いているだろうから、あまり批判してもどうかと思うが、「日本ゲーム大賞」を外のスタジオで収録したのは大きなミスだったのではないか。

 と、いくつか愚痴らしきものを書き並べてしまったが、やはりオフラインイベントはそれ自体が素晴らしい。筆者も幾つかのアポイントを取ってブース取材を行い、現地レポートを掲載したが、やはり現場取材は有意義だし、これこそがメディアの仕事だと思えるところがある。初日視察に訪れていたメーカートップやゲームクリエイター、マーケティング担当者とも久しぶりにオフラインで再会して情報交換ができた。また、今年も過半数の記事がオンライン配信がベースとはなったが、オフライン取材が可能となったことで、昨年より厚みのある記事展開ができたのではないかと思っている。こういう機会を提供してくれたCESAおよび日経BPに感謝を伝えたい。

 大事なのは今年の経験を来年以降にどう活かすかだ。上記に書き連ねたメディアがどう、インフルエンサーがどうというのは、自分で書いておいてなんだが、すべて枝葉末節だ。どうでもいいし、全部無視して構わない。重要なのは会場からまったく失われてしまったゲームファンの姿、ゲームファンの笑顔、ゲームファン同士の交流をどう取り戻すかだ。そこがコミットできないなら、オフラインイベントとしての東京ゲームショウには価値がないと思うし、“ゲームの聖地”として、そこにこだわるゲームショウであって欲しい。

 会場ではCESA関係者からも、メーカーからも、当然来年こそはフルスペックの状態でやりたいという声が多く聞かれた。26周年の東京ゲームショウは果たしてどのような形での開催となるのか、正式発表を楽しみに待ちたい。最後に、東京ゲームショウ オフラインの参加者の皆様、大変お疲れ様でした。取材協力ありがとうございました。また来年もよろしくお願いいたします。

GAME Watch,中村聖司

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